皆さんこんにちは、3月19日から産総研地質標本館にて開催されている青柳コレクション展ですが、
開催中に機会がありましたら、是非足を運んでいただければと思います。
そのすばらしきコレクションの数々に、きっと感動するに違いありません。
ずらり並んだ展示物を目の前にすると、宝飾品になる前の原石やそれらの結晶が、
まさに宝石だということが実感できるはずです。
前回、ポスター用として撮影させていただいた、
そんなすばらしい鉱石群の中の2点について、印象や撮影秘話を紹介させていただいたと思いますが、
今回はその第二弾ということとなります。
●緑鉛鉱
まずは緑鉛鉱といきましょう。
最初にこの石と対面した時「えっ、これが石?」と、そんな印象だった。
手にするとズッシリ、小さい塊の割に重さを感じる、結晶面に恐る恐る触れて観ると、確かに石だ。
まるでアクリル樹脂のような光沢と色からは、一部だけを観るととても石とは思えないくらいの質感だ。
撮影側としては、その石全体を見る限り、結晶の周りに岩石が付いていて安定感もあり、
撮影的には比較的撮りやすそうな石だと思った。撮影台にその石を置き、しばし眺めながら、
石の角度やカメラアングル等を探していた。
石の形自体、
安定感があるためか石を浮かせて撮るための小さな台の上に乗せても非常に安定している。
しかし安定しているのはいいが、撮影の面が少しくぼみのある平坦で同じ色の結晶の集まりの為か、
なかなか思うような良い角度が見つからない。
そんなことでしばらくアイポイントを決め倦んでいた。
イメージ的には撮影が比較的楽と思われた「石」の前にとりあえずカメラをセットし、
いざライテイングやフレーミングに入った。
その後その石の撮影にとんでもない時間と試行錯誤の連続となる戦いとなってしまった。
その戦いぶりを話しましょう。
今回の撮影において私は、「石の標本的」を撮影するということは頭になく、
その石の持つ歴史や存在感、完成された色彩バランスといった形、標本写真にはない、
そんな石の姿を表現しようと思っていた。
自然界における様々な鉱物の結晶や植物、動物等々、
色彩とバランスは人間の考えを遙かに超えた、究極的なデザインだと私は思っている。
特に鉱石の結晶、熱帯魚の色、草花の配色は当然ではあるが、完璧だ。
そんな思いで、この石も撮ろうとしばらく眺めていたが、
あまりにシンプルで完成されたデザインの結晶と、それらの集まりの為、
どこから観ても絵になる被写体に興奮していた。
まずは結晶面の色や形、
岩石とのコンビネーションを陰影のあるライテイングで結晶の勢いを表現しようと試みた。
しかしあまりのアクリル的色彩と色つやのため、
勢いどころかまるで成長が止まった合成樹脂か蝋細工の集まりのようになってしまった。
試し撮りでインスタントフィルムを使い、
なぜそう見えるのかフラットなライテイングとシャープなライテイングで交互に観ていくと、
つやのある結晶とつやのない結晶が入り交じっていることがわかった。
その為つやのある結晶はプラスチックのように、つやのない結晶は蝋のように見えることがわかった。
それが成長の止まった結晶の集まりに見えたのであろう。
しかし逆に見ればつやのない結晶があるからこそ、つやのある結晶がより目立つという考えかたもある。
その考え方を元に今までのライテイングよりもっと強調することを試みた。
すると、面白いことに、
今まで石の結晶の集まりがなんだか硬めのゼリーのように姿を変えてしまった。
まるで「抹茶ゼリー」だ。今までプラスチックのように見えた塊がゼリーの塊になったことで、
周りの岩石はむしろ要らなくなってしまった感じがした。
ゼリーの器のように見えなくはないが、あまり美しくない。
思い切って周りの岩石を画面上からトリミングをすることに決定した。
その分その結晶部分がもっとアップになり、よい生々しく見えるようになった、
がしかし被写界深度がその分浅くなるためピントがどんどん浅くなり、
レンズの絞りが限界まで絞ることに。
しかしあまりレンズの絞りを絞ってしまうとピンホール現象でむしろピントが甘くなってしまう為、
F22までにとどめ、背景を少しぼかすことにした。
その結果、むしろ立体感が出て、より柔らかいゼリーのようになったのである。
そこでイメージを硬い石の結晶を柔らかいクラッシュゼリーの塊のイメージをより強調することで、
見るからに美味しそうな「抹茶ゼリー?」のような石の結晶にはむしろ見えない不思議な表現に行き着いたというわけだ。
最初はこんな表現のイメージではなかったのだが、石の魔力というか、
自己主張というかこのイメージを定着させるのに、長い時間つきあわされました。
緑鉛石という見事なまでも不思議な緑。
この結晶を粉末にすると永遠に変色しない顔料も出来るのであろう、
色や艶がゼリーに見えても当たり前のような気がしたのは、撮影が終わり、
ポジフィルムに仕上がってからしばらくたってからだった。
現物である緑鉛鉱がライテイングによって変身した写真と、
はたして本物を見つけられるかどうか、面白いところだ。
ライテイングしたとはいっても、この鉱石が実際太陽に照らされる環境にあるならば、
今回の写真のように見えることは、当然あるはずだ。
●輝コバルト石
さて次は輝コバルト鉱
皆さんはコバルトブルーという言葉はよく聞くと思います。
コバルトブルーの海、コバルトブルーの空。コバルト、、、イコール、、、ブルーと思えるくらい、
それほどコバルトはブルーのイメージが強い。
しかし今回出合った鉱石は、コバルトという名を持つが、ピンクである。
それも言葉には表しきれないくらいの不思議なピンクだ。
コバルトピンクという言葉はあるのかどうか解らないが、結晶自体は確かにピンクだ。
それも日本人が好みそうな淡いピンク。ソメイヨシノ桜ほど淡くはないが、桃の花よりは淡い。
その中間の八重桜に近い感じがする。
色の感覚は人によって異なるので、中間色であるピンクは例えが非常に難しい。
自然界ではピンクという色は結構多いように思う。花の代表バラであるローズピンク。
魚の代表「鯛」(最近の養殖鯛はピンクというより煉瓦色ではあるが)等。
鉱石の結晶においてはローズクオーツのピンクが思い浮かぶ、
しかしその多くはピンクと思えるほどの色彩は感じられない。
それほどピンクと言える結晶は少ないように思う。そこで今回出合ったこの結晶。
きれいなピンクというより不思議なピンクといった方が良いかもしれない。
撮影する前に見た印象は決してきれいなピンクとは言えない感じだった。
ピンクというと清潔感というイメージが強いため、さわやかな作品にしたかった。
その為、背景は白と決めていた。
透過されたピンクの結晶は白背景で、くすんだピンク色がきれいなピンクに浮かび上がるだろうという理由だ。
白バック(アクリル板)の上に石を置きライテイングを仕始めた。
透ける結晶のため、スポット光による透過光を効率よく結晶面にあて、内部の屈折を利用して、
宝石感を出そうと思った。
何度も方向を変え後ろ、左右と、3個のスポットライトを当てた。
肉眼で確認する限り、きれいなピンクが表現されたと思った。
しかし何度か比率を変えてライテイングをして、
インスタントフィルムで試し撮りをしたが、思ったほどメリハリのあるピンクが出ないのである。
清潔感というより、色あせたローズピンクといった感じだ。
こんな色ではあまりにこの鉱石がかわいそうだ。
スポット光を減らすと、
益々色のくすみが増え、年老いて行くようにも見えるから不思議だ。
そこで、思い切って白の背景を諦め、ピンクのカクテルをイメージした、黒とした。
予想は的中し、黒の背景にその石を置いたとたん、まるで、深海から釣り上げられた鯛のごとく、
きれいなピンクが浮かび上がった。
しかし、ただの真っ黒の中にピンクでは、ちょっと画面上が重く感じられた。
黒のバックに変更したとはいえ、清潔感のある気品のあるきれいなピンク表現したいのは変わらない。
試行錯誤の過程でスポット光の一つを真後ろに持って行くと、
ベースの黒シートの反射がまるで水面に浮かんだピンクの宝石のように映っているではないか。
一気にそのスポット光を太陽に見立てレンズに入ってしまうぎりぎりで真後ろから光を当てた。
その結果、下に映った光は全面反射となり全く対象のコバルト鉱の塊が映ったのである。
全面反射と入っても黒バックと反射率の関係で実物の4分の1の明るさとなって映り、
水上のマドンナと言ったらオーバーかもしれないが、そんなピンクがそこにあった。
困難は続いた。
静電気のためか、
ピンクの鉱石に向かってゴミが飛んで吸い寄せられていく周りのゴミがまさしく、
宇宙に漂う宇宙ゴミ(宇宙塵)が惑星にぶつかっていくようだ。
エアーブラシで逆噴射。波動砲といきたいが、相手は小さなコバルト石。
優しくエアーを吹きながらのシャッターだ。塵よどうか来ないでくれと願って押したシャッター。
その緊張感がたまらない。これがポジフィルムの一発勝負のおもしろさだ。
微細な塵が映ってしまったが、微細なゴミはあえて取ってはいない、
見つけてもらえば解るがいかに小さな塵か。
しかし不思議なピンク色は良い感じに仕上がったと思います。
仕上がったピンクと黒のコンビネーションのおもしろさを、このコレクション展で見てください。
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